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【提 言】 液状化被害における罹災証明の被害認定について
 
 

2011.5.23(更新)

 5月2日、内閣府は、東日本大震災の液状化現象で起きた住宅の沈下や傾斜について、全壊や半壊などの被害を従来より広く認定する新たな運用基準を発表しました。

 新たな運用基準では、沈下に対する基準が設けられたのと合わせて、1/20以下の一体傾斜でも、10/1000以上の傾斜の場合には「半壊」となり、支援の対象となりました。

 このページで提言した内容に沿った運用基準が示されたことで、一歩前進したと思われます。

 但し、判定結果の見直しと支援金の支出はこれからですし、実際の復旧にはまだ時間がかかりそうです。今後ともこの問題については、継続して注視していますので、情報やご意見などございました下記までお願い致します。

 

 

2011.4.14 提言

 今回の震災では津波被害が甚大であったため十分に報道されていませんが、液状化による沈下被害も深刻で大きな問題です。液状化被害の建物(主に住宅)の罹災証明を受ける際の被害認定において、液状化により沈下した建物は、被害認定に該当する項目がなく判定が過少となる旨の報道がされていました。
 

 この被害認定は、内閣府の「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」に基づいて行われていますが、この中の「地震被害」の章では、主に地震動による水平力により建物が傾斜変形して(これを「変形傾斜」と称します)、建物の倒壊や、壁のひび割れや剥落など損傷する被害を想定しています。一部「液状化」の記述がありますが、この場合も液状化により建物が部分的に沈下変形して損傷する被害を想定しているようです。しかし、実際の液状化被害は、近年、基礎の剛性が高くなったため、建物全体が一体的に沈下傾斜するもので(これを「一体傾斜」と称します)、ほとんどの場合、床や内外壁、屋根、建具などの被害認定を行う部位に損傷は生じません。

 

 被害認定基準では、図-1の通り、外壁又は柱の傾斜角が1/20以上の場合は「全壊」となりますが、1/60〜1/20は壁・基礎の損害割合を15%として部位による判定を行い、1/60以下は部位による判定のみを行います。「半壊」と認定されるには損害割合が20%以上ですが、液状化の場合、前述の通り、建物の沈下以外に損傷は生じないため、外壁や柱の傾斜が1/20以上でないと認定の対象にならないことになります。これが被害判定が過少となるのがこの問題です。


 但し、部位別判定の「基礎」のD不陸には、「不同沈下等により布基礎の沈下又は傾斜が生じた場合、その部分の全基礎長さを損傷基礎長とする」、G地盤の流出、陥没、液状化には「基礎の直下の地盤が流出、陥没又は液状化した場合、その部位の全長長さを損傷基礎長とする」とあります。基礎は建物にとって重要な部位であるため、「損傷率が75%以上となる場合は、当該住家の損害割合を50%以上とし全壊と判定する」となっており、「基礎の沈下又は傾斜」の評価が適正にされればこの問題は解消されます。

図-1 被害認定基準フロー


 2008年2月に改訂された日本建築学会「小規模建築物基礎設計指針」(以下「指針」)には、建物の不同沈下を「変形傾斜」と「一体傾斜」の沈下形状を判断し、それぞれ損なう機能を考慮して修復の要否を検討する事を規定しています。前者は構造軸組の変形による構造的な問題(前述の被害判定が主眼とするところ)、後者は使用性や機能性など居住性の問題(液状化被害の多くはこちら)です。(旧「小規模建築物基礎設計の手引き」では基礎の剛性が低く不同沈下した場合にはほぼ「変形傾斜」となるため区分されていませんでした。)

 

 柱の傾斜(鉛直)に比べて、基礎や床の沈下傾斜(水平)は、居住性を大きく支配するので、許容レベルを超えれば、使用上や機能上の不具合が生じ、ある限度を超えれば「居住出来ない」と言う建物の「根本的な機能」を失う事となります。基礎や床の沈下傾斜程度は、指針表10.2.2によれば、傾斜角の標準限界値は6〜8/1000であり、使用上機能上の支障を生じます。また、表10.1.1によれば、傾斜角8〜10/1000でほとんどの建物で建具が自然に流れ、排水等が逆勾配となり建物の機能を大きく損います。

 

 前述の1/60は17/1000に相当し、めまいなど居住者に生理的な影響が出るレベルは建物の居住性の観点からすれば論外で、これ以下の傾斜を無視出来るものではありません。
 少なくとも、建物の機能を損なう8〜10/1000を超える場合には「不同沈下等により布基礎の沈下又は傾斜が生じた場合」に相当すると考えるべきです。
 

 但し、一般に沈下修正費用は再築費用の1/2程度以下と言われています。上述の規定により「全壊」と判定されても一体傾斜による建物の沈下は上部構造は健全で、沈下修復を行えば機能を回復出来る事から、この点を考慮して判定がなされるべきと考えられます。

 上述のように認定基準自体に不具合がある訳ではなく、運用上の問題です。この被害認定は、応急危険度判定や被災度区分判定と異なり、経済的損害の把握を目的とするものですから、調査を実施される専門家や認定を行う行政の担当者の方が、建物の構造安全性ばかりでなく居住性の観点も目を向けて運用される事を望みます。

 構造的に安全でも居住性に支障があれば修復せざるを得なく、その修復には多額の費用が必要となる訳ですから。

 

図-2 沈下形状の区分

指針 表10.1.1 傾斜角と昨日的障害程度の関係

傾斜角

障害程度 区分
3/1000以下 品確法技術的基準レベル-1相当 1
4/1000 不具合が見られる 2
5/1000

不同沈下を意識する

水はけが悪くなる

6/1000

品確法技術的基準レベル-3相当。

不同沈下を強く意識し申し立てが急増する.

3
7/1000 建具が自然に動くのが顕著に見られる
8/1000 殆どの建物で建具が自然に動く 4
10/1000 排水管の逆勾配
17/1000 生理的な限界 5

 

指針 表10.2.2 小規模建築物の傾斜角と変形角の限界値

沈下傾斜量 下限 標準 上限
傾斜角 4/1000 6〜8/1000
変形角 3/1000 5/1000 8/1000

 既に認定がなされた場合でも、被災者からの不服申し立てにより再調査が実際される可能性があります。上記の情報を活用される事で少しでも復興のお役に立てれば幸いです。

 なお、弊所では、これまで住宅の振動被害や沈下被害に関する調査研究を行うと共に、上記「指針」の該当箇所の執筆を担当致しております。被災者の方並びに行政のご担当者からの、基礎の沈下の評価等に関するお問い合わせ及び技術資料提供等の要請に対応いたしますので、ご希望者は下記アドレスまでご連絡下さい。

この件に関するお問い合わせはここ


液状化被害を受けられた方への支援

 既存建物の振動被害や沈下被害に関する調査研究を行う弊所では、直接的な復興のお手伝いのすべはありませんが、液状化被害を受けられた方へ、以下の支援を行います。
(無料で行いますが対応出来る棟数を超えた場合にはお断りする場合もあります)
・不同沈下状況の測定及び評価
・建物の不同沈下障害に関する情報資料等の提供
・沈下修復工事に関する技術情報の提供
・被害や修復に関するお問い合わせとご相談

但し、
・今回の災害で被災された東京近郊の建物所有者のみに限定させて頂きます。
・修復工事等の斡旋及び紹介等は行いません。
・修復工事の見積及び業者見積額に関するアドバイスは行いません。

 

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