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号外-2 地盤変動影響調査算定要領(案)の考察 その2
【今回のテーマ】

 事業損失の調査算定要領は公共事業の起業者によって様々ですが、国土交通省が中心となる用地対策連絡協議会(用対連)の調査算定要領が多く採用されています。
 地盤変動影響調査算定要領(案)(以下「新要領案」)の施行に伴い「業務費積算基準」が改訂されましたが、再度、現状の問題点につて考察してみました。

 (以下はあくまで当研究所の私見です。)

【業務費積算基準改定の概要】

 新要領案については、2014年の号外で問題提起しましたが、その一つが業務費用の問題でした。
従来に比べて約2.5倍程度の工数が掛かるとの調査結果がありましたが、今回の改訂はこれらに対応したものと考えられます。以下のように、業務費は従前に比べて約1.8倍程度になり、「水準測量が必要な場合は別途」と明記された事も加えると、直接発注の場合について、業務費の問題はほぼ解消されるものと思われます。

残った問題点と新たな課題
@「すべて」を調査する事が原則であれば、それ以外はすべて工事による被害と見なされること

 前回も問題提起した事ですが、最も大きな問題です。実際の訴訟案件でも、原告は事前調査で記録されていない損傷を探し出し「工事による被害」である事を主張しています。軸部の傾斜と内壁の亀裂・散り切れ等以外は「全ての損傷調査」の対象ではありませんが、「全ての損傷を調査する」と捉えられている傾向があり、内壁の亀裂や散り切れにしても「記録が無ければ工事による被害」と認定される危険性があります。この問題点についての認識は高まっていると思われますので、次回の改訂では何かしら考慮された内容になることを期待します。

 

A工事業者(請負者)経由の調査

 事前調査は起業者からの直接発注よりも工事業者(請負者)経由の方が多く、この業務費積算基準の改訂が十分に反映されない可能性があります。上表は起業者から直接発注される場合ですが、実際の工事業者(請負者)経由の調査費との差は公表が憚られるほど大きく、調査の質・内容に影響を与えかねません。新要領の志向する「全ての調査」とそうではない実態との乖離が拡大していくことが懸念されます。

 

B他の起業者の動向

 多くの起業者で新要領案が採用されていますが、内容を十分に把握されていないところが少なくありません。このため、今回の業務費積算基準が採用されるかは非常に不透明です。また、積算基準が採用されても、現場サイドでは調査内容の精査がなされない事もあるため、低価格入札が増加し、延いては新要領の要件を満たさない調査が多くなることが考えられます。加えて、業務費の上昇による予算の圧迫で、本来必要な調査範囲を縮小せざるを得ないような事態を招きかねないことも懸念されます。
 

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